転職して天職を

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転職を処世のコツにする理由

転職で天職を探すことを、私はサラリーマンとしての処世のコツだと考えています。理由はシンプルで、今の会社が定年まで存続しているかどうか、誰にも分からないからです。倒産やリストラなど、想定外の出来事は起こり得ます。だからこそ、働く環境を変える柔軟さを持つことが、自分の人生を守る方法になるのです。

私自身、これまでに四度の転職を経験しました。エンジニア、ホスト、土木・鳶職人、そして再びエンジニアと、まったく異なる業種を渡り歩いてきました。最初は不安もありましたが、その一つひとつの経験が今の自分を形作っています。


初めての職場で学んだ限界

最初に就いたのはエンジニアの仕事でした。内容自体は楽しく、設計や技術に触れるやりがいもありました。しかし会社は典型的なブラック企業で、月100時間を超える残業や深夜の呼び出しが当たり前でした。若さで耐えていましたが、体が悲鳴をあげ、貧血で倒れることもしばしば。入社から2年が経った頃、「このままでは本当に壊れる」と感じ、思い切って辞めました。最初の挫折でしたが、今振り返れば正しい選択だったと思います。


異世界への挑戦 ― ホスト時代

次の仕事は、先輩の紹介で飛び込んだホストでした。人と話すことが得意ではなかった私にとって、大きな挑戦でした。最初は緊張の連続でしたが、お客様と接する中で徐々に楽しさを見つけていきました。富裕層のマダム、経営者、キャバクラで働く女性など、普段の生活では出会えない人たちと交流し、多くを学ばせてもらいました。

特に印象深いのは、「人に関心を持ち、真剣に耳を傾けること」の大切さです。私は会話の内容をメモに残し、次回の話題に活かしていました。それがお客様にも伝わり、「君は本気で聞いてくれる」と評価をいただきました。この経験を通して、自分には社交性があるのだと気づけたのです。ただ、お酒に弱いこともあり、半年の契約期間を終えて区切りをつけました。


体力で挑んだ土方と鳶職

その後は「体を動かす仕事なら大丈夫だろう」と考え、建設現場に飛び込みました。最初は肉体的に過酷で、現役のキックボクサーだった私でも筋肉痛に苦しみました。しかし2か月ほどで体が慣れると、鳶職の手伝いも任されるようになりました。高所作業は多くの人が恐れる仕事ですが、私は不思議と恐怖を感じませんでした。その点を評価され、鳶職としても働くことになったのです。

当時20代前半でしたが、現場監督や社長から信頼を得て、若手ながら責任ある仕事を任されました。人間関係にも恵まれ、給料面でも評価していただきました。1年半ほど続けましたが、会社の業績悪化でリストラの話が持ち上がったとき、年配の職人さんを守るために自ら退職を申し出ました。思い返せば、この時期が最も「仲間と共に働く楽しさ」を感じた時間だったかもしれません。


再びエンジニアの道へ

次に選んだのは、地元で募集していた製造業のエンジニア職でした。パソコンスキルやCADの経験を活かせると考え応募しましたが、入社後に「実は営業職だ」と告げられたのです。最初は驚き、すぐに辞めようとしましたが、上司の理解もあり「営業をしながら技術も学ぶ」という特例を認めてもらえました。これが大きな転機となります。

営業、設計、工場、生産、システムと、さまざまな部署を経験できたのです。最初は問題児のように扱われましたが、時間をかけて信頼を築き、やがて社内のパイプ役となりました。こうして積み重ねた経験が、システムエンジニアとしてのキャリアにつながっていきました。


転職に対する考え方

日本では「転職=ネガティブ」という考えが根強く残っています。しかし、海外ではより良い条件ややりがいを求めて転職することは当たり前です。会社に尽くすことが美徳とされがちな日本ですが、誰のために働いているのかを冷静に考えることも大切です。

私は「やりたいことを探し、面接を受け、内定をもらって次に進む」というシンプルな行動を繰り返してきました。もちろん不安はありましたが、動いてみなければ何も始まりません。履歴書を書き、応募し、面接を受ける。その一歩が未来を変えるのです。


天職とは何か

天職とは「自発的にやりたいと思える仕事」です。会社の規模や給料の多寡ではなく、その仕事を通じて困難を楽しみながら乗り越えられるかどうかがポイントです。

具体的に想像してみてください。フレンチのシェフ、南国のホテルマン、デザイン事務所の経営者、車の営業マン…。思い浮かべた職業に胸が高鳴るなら、それが天職候補です。大切なのは、曖昧にせず具体的に描くこと。ブレない芯を持つことが、天職を見つける近道になります。


社内での「転職」も選択肢に

必ずしも会社を辞める必要はありません。大きな組織であれば、設計から総務、営業からシステムなど、社内で異動することでも新しい可能性を見つけられます。いわば「社内転職」です。ジョブローテーション制度を利用するのも良いでしょう。リスクが少なく、自発的な姿勢を評価してもらえる場合もあります。


まとめ

私の転職遍歴は、順風満帆とは言えませんでした。しかし、その一つひとつが今のキャリアと人間性を育ててくれました。転職は怖いものではなく、自分の未来を切り開く大切な選択肢です。天職を探す旅路は簡単ではありませんが、行動する人にしか道は開けません。

あなたにとっての天職は、必ずどこかに存在します。大切なのは、自分の心に正直に、行動を重ねることです。

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